第6回:『標的の島 風かたか』 三上智恵監督 2017年


 映画のなかで、元宜野湾市長の伊波洋一参議院議員が語ったアメリカの「エア・シーバトル構想」というものがあります。それは、米軍や自衛隊、中国が言うところの第一列島線(日本列島、沖縄本島、先島諸島をつなぐ線)を防波堤にして、近年、軍事力を増す中国を抑え込もうという戦略です。「風(かじ)かたか」とは、沖縄の言葉で風よけ、防波堤のことです。

 安倍政権は、奄美、沖縄本島、宮古島、石垣島に自衛隊のミサイル部隊を配備し、軍事要塞化しようとしています。有事の際に、中国軍が、太平洋へ進出するのを防ぐためです。何かあれば、これらの島々は武器を持っているわけですから、真っ先に「標的」つまり戦場になると、映画は警鐘を鳴らします。アメリカの「風よけ」として使われることになるわけです。これが「エア・シーバトル構想」の一環です。住民に逃げるところはありません。

 米軍辺野古新基地移設や、高江のオスプレイのヘリパッド建設に関しても、安倍政権は強硬姿勢を崩しません。日本を守るためではありません。2016年7月の参院選沖縄選挙区で、米軍辺野古新基地移設に反対する伊波さんは、自民党の島尻安伊子氏を破って当選しました。そのわずか9時間後、まるで島尻氏を落選させた沖縄県民へ報復でもするかのように、安倍政権は、米軍北部訓練場に囲まれた高江の集落の森へ、ヘリパッド建設のための大量の工事車両を送り込みます。その後、沖縄県内外から集まった人たちによる反対運動は激化し、機動隊に攻撃されて怪我人も出ます。自分たちに逆らう者は、暴力によって排除するという、安倍政権の強権的な性格が現れています。

 雨の中、森の前で、機動隊員の青年が反対運動の女性に目をじっと見られるシーン。青年は、一瞬女性を見返しますが、すぐに視線をそらし、落ち着きなく辺りを見回します。暴力を用いない反対運動の女性と、何かあればすぐに相手をねじ伏せて逮捕できる強大な権力を後ろ盾にもつ機動隊の青年は、戦えばどちらが強いかは明らかでしょう。にもかかわらず、青年は女性に射すくめられます。権力の都合で、ただ「風よけ」にされるわけにはいかないのだという沖縄県民の当たり前の怒りは、制圧しようとしている機動隊員の青年だって、もしかしたら薄々分かっているのかもしれません。だた、彼は何も言うことなく、黙々と任務に就きます。それを裏で操るのが安倍政権です。

 大手メディアは伝えませんが、沖縄で何が起こっているのか、この映画は色々教えてくれると思います。『標的の島 風かたか』は沖縄・桜坂劇場、東京・ポレポレ東中野などで上映中のほか、全国で順次公開予定。



村木豊
(2017年4月10日掲載)


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