第5回:『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』 サム・ペキンパー監督 1973年


 私は、観た映画の内容をすぐ忘れてしまう質(たち)なので、昔観た映画を、場合によってはまるで初めて観るときのように楽しむことができます。サム・ペキンパーの映画も忘れているものが多く、最近、いくつかDVDを借りて観なおしました。

 19世紀の終わりごろに、アメリカで実際にあった話を基にした『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』も、あまり覚えていなかったペキンパー作品のひとつです。ペキンパーには、『戦争のはらわた』(ひどい邦題ですね)という、これ一本撮っただけで歴史に名を残してしまうほどの傑作がありますが、『ビリー・ザ・キッド』は、それに比肩するといってもいいすばらしい作品です。なのに忘れていました。

『ビリー・ザ・キッド』は、タイトルでもいってしまっていますけど、21才の若さで死んだ西部劇のヒーロー、ビリー・ザ・キッドの映画です。まあ、何の意味もないような犬死なんですよ。

 犬死するのはビリーだけではありません。この映画において、銃を持っているということは、よほどの脇役でない限り、いずれ殺される運命にあることを意味します。しかもその死は、例外なく、救いのない犬死です。何か、大義のために死ぬとか、弱いものを守って死ぬとか、そういう英雄的でカッコいい死に方は、ペキンパーは許しません。戦わないとか、逃げるという選択だってあるのに、つまらない意地のために銃を持って誰かと殺し合いをしようとするような賢くない者こそ、この映画の主役になり得るのです。そういう奴は、人を殺そうとしているわけですから、自分が撃たれても文句は言えません。だから、ほとんどみんな、犬死だけれどもジタバタしないで納得して死んでいくわけです(少なくともそう見えます)。そこがこの映画のキモです。「犬死っぷり」がいいのです。

 今度は『ワイルドバンチ』を観よう。



村木豊
(2017年3月27日掲載)


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