第4回:『白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々』 マルク・ローテムント監督 2005年



 公開から10年以上経っており、DVDにもなっているのに、映画館にはたくさんの人が来ました。史実に基づく話であり、結末は分かっています。そこに向かっていく疾走感がすごい。主演、ユリア・イェンチの演技も鬼気迫ります。

 1943年2月、反ナチ組織「白バラ」のメンバーである21才のゾフィー・ショルは、ヒトラーの政策を批判するビラを兄とともにミュンヘン大学構内でばら撒きます。しかし、兄妹はその場で逮捕。ゲシュタポに引き渡されて、別々の部屋で尋問が始まります。味方はいません。有罪になれば禁固刑か死刑だと言われます。超おっかない。

 ヒトラーが実力以上の虚勢を張り、スターリングラードの戦いで33万のドイツ兵が犬死。そのことをビラに書いて撒いただけで逮捕、そして死刑。時の権力者が虚勢を張り、その結果、戦争で大敗したのは日本も同じです。

 かつて日本にもゲシュタポみたいな組織である特高警察がありました。今、日本ではテロ等準備罪(共謀罪)が作られようとしています。それに関連して、国民を監視するための特高警察のような組織が復活する可能性もあります。権力にとって気に入らない人を、適当な言いがかりをつけて、恣意的に逮捕できるようにしたいわけです。この映画と似たようなことが、日本でも起こり得ます。テロ等準備罪を成立させなければ、オリンピックは開けないとか言ってる奴がいますが、オリンピックやれなんて言ってねえぞ、俺は。

 それにしても、ドイツ人は優秀だと説き、ユダヤ人を敵視して虐殺していったナチスと、日本人は素晴らしいとか、日本は美しいとかいいながら、一方で中韓を敵視しているどっかの連中って似てるな。気持ち悪いですね。日本人は気持ち悪いの間違いじゃないですか。

 さて話は映画です。この映画は、後半にかけて、ゾフィー・ショルが最期の日々をどう過ごしながら、死を迎えるのかという主題が徐々に露わになっていきます。権力の理不尽に直面した人間がどうふるまうかについての話が、たくさんの客を集めるのは、この時代、皆にとってそれが他人事とは思えないからかもしれません。まさか、ゾフィー・ショルみたいな死に方じゃないと思いたいですけどね。



村木豊
(2017年3月20日掲載)


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