第2回:『あなたを待っています』 いまおかしんじ監督 2016年


 漫画家いましろたかしが原案を担当し、いまおかしんじ監督と組むというのですから、両氏のファンにとっては夢のような話ですね。

 登場人物たちは、みんな自分の欲望に正直で、女が欲しいとか、セックスしたいとか、そんなことばっかり言ってます。冒頭、居酒屋で、姫乃たまにセックスやらせてくれと言って断られ、その腹いせ(?)に姫乃さんのおっぱいをもむ主演・大橋裕之。思いっきりひっぱたかれます。しかもそのあと、姫乃さんは彼氏でもない他の男と路地裏で抱き合ってキスしてます。エロい。それを大橋さんは見ています。すばらしいシーンですね。さすがいまおか監督です。なんで俺はダメであいつはいいんだよっていう、主人公の嫉妬というか、くやしさのような感情が伝わってきます。大橋さんは何かブツブツ言いながらゲロを吐きます。

 大橋さんは、いましろさんが漫画でいつも描くように、地震がやばい、東京がやばい、原発がやばいと言って、バイトをして金を貯め、女を10人連れて原発のない地方に移住しようとしています。どう考えても、原発はすべて廃炉にするしかないのに、川内や伊方原発は動き出してしまったし、安倍政権は他でも再稼働する気満々です。しかもそれが大きなニュースにならないという。ミサイルでも撃ち込まれたら終わりです。テロリストは原発を狙うはずです。国防をいうんだったら原発やめろよな。

 その後、人物がたくさん出てきて、話のスジに関係ないようないろんなエピソードが、各所で挿入されます。いましろさんは、漫画『新釣れんボーイ』のなかで、自身をモデルにした漫画家ひましろ先生に、「この映画はストーリーに関係ないところが見せ場だから、余分な所を切ってしまっては映画そのものがなくなってしまう」というようなことを言わせています。「余分な所」そのものが作品なのだという考えは、いましろさんの漫画にも通底していると思います。「余分な所」を切ったら、漫画がなくなってしまう、とまではいわないまでも、切ってはいけない。

 なんか情けない奴が出てきて、頑張るんだけど情けない結果に終わるとか、こんなエロい話を思いついたんで撮りたいとか、そういういろんなアイデアが全部詰め込まれていて、楽しんで撮ったんだろうと感じさせます。よく知りませんが。

 いましろさんやいまおか監督の人柄が、作品ににじみ出ているんですよ。登場人物たちに対してすごくやさしい。とにかく私はこの映画を観てほっとしたのです。



村木豊
(2017年3月6日掲載)


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