第14回:『北陸代理戦争』 深作欣二監督 1977年


「監督、これコメディーじゃないすか。いいんですか。ヤクザ映画じゃないんですか」

「いいんだよ。もう『仁義なき戦い』みたいなのは、うんざりなんだよ」

 という会話は、この映画を観ている最中の私の脳内で交わされたものです。

 一応、体裁はヤクザ映画なんですよ。北陸地元ヤクザの血みどろの抗争の。でもやってることは完全にギャグなんですよ。だって、雪の中、地面に埋められて顔だけ出てる爺さんが、「もういっぺん話し合おうー!」とかなんとか言ってて、松方弘樹がその頭の周りのギリギリの所をジープでバンバン走ってるんですよ。おかしいでしょ。で、なんとか助かった爺さんが、温まろうと思って風呂に入ろうとするんですが熱くて入れない。そりゃそうでしょ、さっきまで極寒だったんだから。それで、「ノボルを殺せ」とか言ってるんですけど、この時点で、観客である私は気付くわけです。この映画、なんか違う、と。この「雪の中で顔だけ出して埋められている」ネタは何度か使い回すわけですが、何度見せられても笑ってしまう。気に入らない奴はいつの間にか埋まっているという省略の仕方がツボです。

 私だって、こんなギャグ映画だと思ってシネマヴェーラくんだりまで観に行ったわけではないんです。別にヤクザ映画が好きだというわけではないですが、でも深作欣二ですよ。『仁義なき戦い』ですよ。「そっち路線」だと思うじゃないですか。それがまさかなんですよ。別にいいんですけど。

『北陸代理戦争』は『仁義なき戦い』の再来ではありません。この二作品の間で、深作欣二に何があったのか、調査して検証する気はありませんけど。とにかく変化したことに違いありません。トビー・フーパーが『悪魔のいけにえ2』で見せた変化は、これに似ています。『悪魔のいけにえ』を「ホラー度」で超えることはできないし、無理に超えようとして失敗するのが一番痛い。だったら、『2』では殻を破ってコメディーにしようという変化です。深作欣二は、『仁義なき戦い』を観た私のような客が想像している「路線」を踏襲していると見せておいて、実はまったく別のものを作っています。その肩すかし的効果が笑いを生むのです。たぶん。

 最後のナレーションでは、北陸三県の気質を称して、越中強盗とか加賀乞食とか越前詐欺師とか言い放ち、しぶといなどと結んで唐突に終わります。いいのかよ、そういうこと言って。



村木豊
(2017年6月5日掲載)



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